バックパッカーアフリカ編 30日目──帰国の日に見えた旅の意味
バックパッカーとしてアフリカを旅してきた独身時代の記録も、ついに30日目、帰国の日を迎えることとなった。長く続いた冒険の日々は一瞬のように過ぎ去り、振り返れば数え切れないほどの出会いや体験が心に刻まれていた。 前夜、砂漠で満天の星を見上げた時間は、この旅の象徴のように鮮明に残っている。ガイドや仲間に別れを告げる時、言葉はなくても握手の温もりが心を伝えてくれた。都市に戻ると、喧騒の中で改めて「自分の日常」が近づいていることを感じた。空港までの車窓から、これまでの旅の断片が次々と蘇る。市場の賑わい、子どもたちの笑顔、サバンナの動物たち、砂漠の静寂。どれもが人生を豊かにする瞬間だった。 空港でバックパックを下ろした時、身体の負担から解放されたと同時に、もうこれ以上この荷物を背負って歩かないのだと気づき、心にぽっかりと穴が空いた。搭乗ゲートでノートを開き、急いで言葉を綴った。すべてを言葉にすることはできなかったが、その瞬間の思いを残すことが未来への贈り物になると感じた。 飛行機が離陸し、大地が遠ざかると涙がこみ上げた。アフリカは自分に「生きること」の意味を教えてくれた場所だった。自然の雄大さ、文化の多様さ、人との出会い。全てがかけがえのない財産となった。 帰国の途上で気づいたのは、「自由」と「安らぎ」の両方が必要だということ。旅は自由を与えてくれるが、帰る場所は安らぎを与えてくれる。そのどちらもが人を支える柱となる。日本に戻り、見慣れた文字や景色に触れた時、安心感と同時に、自分が新しい日常へと進んでいくことを実感した。 久しぶりに自宅の布団に横になった瞬間の心地よさは格別だったが、心の奥では砂漠の星空や人々の笑顔が鮮明に残っていた。旅は終わったが、体験は決して消えない。むしろ未来の自分を導く指針として生き続けるのだ。 30日目の帰国は、終わりではなく始まりだった。アフリカで過ごした日々は、独身時代の私を育み、今の自分を形作った。そしてこれからもその記憶は人生の中で光り続けるだろう。 旅は終わらない。心の中で、そして日常の小さな発見の中で、旅は続いていくのだ。 川滿憲忠