子供と一緒に風鈴作り──素焼きにマジックで描いて、舌と短冊で音色をととのえる夏
夏の窓辺に「チリン」と鳴る一音。今回は、子供と一緒に体験した“素焼きの風鈴作り”をまとめます。真っ白な素焼きにマジックで絵を描き、舌(ぜつ)と短冊の位置関係を調整して、きれいな音が鳴るまで親子で試行錯誤。世界にひとつの風鈴が、思い出といっしょに完成しました。
まずは受付で素焼きの風鈴本体を受け取り、にじみにくい油性マジックを用意。子供の好きな色を選ばせると、迷いなくぐるぐる線や星、動物の顔が現れていきます。立体物に描くのは平面より難しいけれど、その“ズレ”や“たどたどしさ”こそ唯一無二の味。親は「濃い色→薄い色」「広い面→細部」の順で塗るなど、仕上がりが整うちょっとしたコツをサポートします。
つぎは音づくりの核心、舌と短冊。舌は風鈴内部で揺れて胴に触れ、短冊は外で風を受ける役。ここが遠すぎると鳴らず、近すぎると濁る――子供と一緒に数ミリ単位で結び目をずらし、仮留め→試奏→微調整を繰り返します。短冊は和紙や少し厚めの紙だと扱いやすく、子供が描いた模様も映えます。舌の先端が胴の内壁に「軽く触れる」位置に落ち着いたら、うちわで微風を作って試奏。「チリン」と澄んだ高音が立ったら、親子で思わずハイタッチ。
仕上げ前にもうひと工夫。①短冊の長さは風の通り道に合わせて手首一つ分ほど、②結び目は経年で緩むので二重結び+余り糸を5mm残す、③屋外に吊るすなら防滴ペンや透明ニスで軽くコーティング――この三点で“長く鳴る”風鈴になります。
帰宅後は、窓辺の風だまりを探して設置。朝は柔らかく、夕方は少し低く響く――時間帯で音の表情が違うことに子供が気づいたら大成功。「音は風の見える化だね」と話すと、短冊の揺れ方と音量を結びつけて観察するようになりました。工作×理科×季節感が同時に育つのが、風鈴作りの醍醐味です。
最後に安全面のメモ。吊り下げ場所は手が届きすぎる位置を避け、紐の長さは子供の首回りより短く。割れ物なので落下防止の結束も忘れずに。飾るのが難しい家では、室内のエアコンの風が当たる位置に“短冊だけ”を軽く動かせるよう工夫すると、無理なく楽しめます。
にぎやかな夏も、ひとつの音から静けさを思い出せる。そんな小さな楽器を、親子の手で整える時間は、きっと来年の夏も語りたくなる思い出になります。
川滿憲忠