独身時代バックパッカー東南アジア編:1日目 カオサンロードに降り立つ
# 本文
独身時代に30日間のバックパッカー旅を決意したとき、最初に目指したのがタイ・バンコクのカオサンロードでした。世界中のバックパッカーが集まり、安宿や屋台、旅行代理店、バーが立ち並ぶその通りは、まさに「バックパッカーの聖地」と呼ばれる場所。ここから旅を始めることが、自分にとっての儀式のように思えたのです。
関西国際空港を夜に出発した飛行機は、翌朝スワンナプーム国際空港に到着しました。降り立った瞬間、湿気を含んだ空気とスパイス、排気ガスが混じり合った独特の“アジアの匂い”が身体を包み込みます。それは不思議と懐かしく、これから始まる冒険の象徴のように感じました。
空港から市内まではエアポートバスで移動。窓の外には高層ビルの合間に市場や屋台が広がり、スクーターに3人乗りした家族が笑顔で走り抜けていく。雑然とした景色に圧倒されながらも、これが憧れていた「混沌のアジア」だと実感しました。
午前10時頃、カオサンロードに到着。まだ昼前で通りは静かでしたが、両脇には古びたゲストハウスや旅行代理店、土産物屋が並び、夜になると表情を変える気配を漂わせていました。事前予約をせず、現地で宿を探すのが僕のスタイル。客引きに連れられて入った安宿は、ファン付きの部屋で1泊150バーツ(約500円)。ベッドは硬く、壁も薄い。それでも「これこそ旅だ」と心から感じる空間でした。
昼は屋台のパッタイとシンハービール。欧米からのバックパッカーが昼からビールを飲み、旅の話で盛り上がっている姿に、自分もようやくその仲間入りを果たした実感が湧きました。夕方になると、通りはネオンと音楽に彩られ、屋台でサソリやバッタの串が並び、世界中から集まった人々が夜を楽しんでいました。
その夜、半年かけて東南アジアを旅しているというドイツ人と出会い、地図を広げながら宿や移動手段の情報を教えてもらいました。旅人同士の出会いは短いけれど濃密。その一期一会が、これからの旅の醍醐味になるのだと感じました。
深夜、喧騒の中を歩きながら「この30日間、僕はどんな体験をして、どんな自分に出会うのだろう」と考えました。期待、不安、そして大きなワクワクに包まれながら迎えた1日目。独身時代だからこそできた挑戦の幕が、こうして開いたのです。