独身時代バックパッカー アフリカ編13日目:サハラの砂漠と人との出会い


バックパッカーとしてアフリカを旅した独身時代、13日目の記録は、サハラ砂漠で過ごした一日と、そこで出会った人々との交流について書き残したい。砂漠はただの大自然ではなく、そこに生きる人々の歴史と文化、そして私自身の心を深く映し出す鏡のような存在だった。


早朝、まだ夜の気配が残る時間にテントから出ると、空一面に無数の星が広がっていた。日本では決して見られないような星の濃さ。深呼吸すると乾いた空気が肺にしみ込み、砂の冷たさが足の裏に伝わった。昨日の夕暮れにラクダに揺られて辿り着いた小さなオアシスの村。そこに住むベルベル人の家族が、私を温かく迎えてくれた。


彼らの朝は、驚くほど静かで穏やかだった。焚き火に小さな鉄鍋を置き、ミントティーを淹れる。甘く、そして清涼感のある香りが漂い、砂漠の乾いた空気に広がっていく。その一杯を口にした瞬間、旅の疲れがすっとほどけていくのを感じた。どこにいても「お茶」を分かち合う文化は、人と人との距離を近づけるのだろう。


昼前、私は現地の若者に誘われ、砂丘を越えて別の集落まで歩いてみることにした。太陽は容赦なく照りつけ、気温はどんどん上がっていく。しかし、彼らは慣れた足取りで砂の上を進んでいく。私はというと、すぐに息が上がり、足が砂に取られて思うように進めない。彼らは笑いながら待ってくれ、時には手を差し伸べてくれた。その優しさに、言葉以上の絆を感じた。


道中で出会った遊牧民の老人は、静かな目で私を見つめながら、砂漠を生き抜く知恵を語ってくれた。水をどのように見つけるか、風の向きで方角を知る方法、ラクダの足跡から群れの状態を見抜く術。どれも私には未知の世界で、ただただ感嘆するばかりだった。文明の便利さに囲まれて生きてきた私にとって、その知識は生命に直結するものであり、言葉通り「生きる力」そのものだった。


午後になると、砂漠の景色は一変した。陽炎が揺れ、砂の色が赤く染まり、空との境界が曖昧になっていく。その幻想的な光景に、私はしばらく立ち尽くした。写真では決して伝わらない世界。体験した者だけが知る「砂漠の魔法」だった。


夜、再び星空の下で焚き火を囲む。ベルベル人の家族と、旅の仲間となった若者たちが歌を歌い、太鼓を叩く。そのリズムに合わせて、自然と体が揺れ、笑い声が広がっていった。言葉は通じなくても、音楽とリズムが心を繋ぐ。私はその瞬間、「旅をしていてよかった」と心の底から思った。


サハラ砂漠の一日は、ただ過酷な自然を体験するだけでなく、人と人との結びつき、文化の温かさを教えてくれた。振り返れば、この13日目は、旅全体の中でも特に心に残る一日だった。独身時代に体験したこの記憶は、今も私の人生を支える大切な糧となっている。


川滿憲忠

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