独身時代バックパッカー旅:アフリカ14日目の出会いと学び
独身時代にアフリカをバックパッカーとして旅した経験は、今の私にとってかけがえのない財産となっている。14日目を迎えたこの日もまた、予想もしていなかった出会いや体験が待ち受けていた。アフリカの大地は一日ごとに表情を変え、旅人に新たな学びを与えてくれる。そんな日々の積み重ねこそが、旅を通じて私の価値観を深く揺さぶり、今に続く人生の軸を形成していったのだと思う。
この日は、現地の小さな町で迎えた朝から始まった。前日までの移動はバスと乗り合いタクシーを繰り返し、身体は正直疲れていた。しかし、町の人々の穏やかな生活のリズムに触れると、不思議と疲れは薄れていく。市場の一角では、子どもたちが笑顔で果物を売り、女性たちが談笑しながら商品を並べていた。旅行者としてその光景を見ていると、日常の中にあるエネルギーと温かさを強く感じる。都会で効率やスピードばかりを求めていた生活とは全く異なる、時間の流れに身を委ねる感覚だった。
特に心に残ったのは、地元の青年との出会いである。英語が通じるかどうかも分からない中で、彼は片言の言葉と豊かなジェスチャーで、町を案内してくれた。観光地ではない路地裏や、地元の人だけが知る食堂を紹介してくれ、そこで食べたスパイスの効いた料理は今でも忘れられない。旅をしていると、ガイドブックには載っていない瞬間こそが記憶に残るのだと、この時改めて実感した。
また、この日は現地の学校を訪れる機会にも恵まれた。青年の知り合いが教師をしており、短い時間ではあったが授業の様子を見学することができた。生徒たちは皆、目を輝かせながら学びに向き合っていた。机も椅子も揃っていない教室だったが、そこにあったのは教育を通じて未来を切り開こうとする真剣な姿だった。私はその場で、改めて「学ぶことの力」を強く思い知らされた。日本で当たり前のように享受していた教育が、どれほど尊いものであるかを痛感した瞬間である。
午後は再び市場を歩きながら、青年と旅の話を交わした。彼は自分の町を誇りに思っており、同時に外の世界にも憧れていた。インターネットやテレビで見た「世界」を知りたいという欲求を持ちつつも、日々の生活に追われてなかなか実現できないと言っていた。その言葉を聞きながら、私は「旅ができる自分」がどれほど恵まれているかを改めて考えさせられた。彼にとっては夢のような「外の世界」が、私にとっては日常の延長としてのバックパッカー旅になっている。その立場の違いを意識すると、ただ楽しいだけではない重みが胸に広がった。
夜は町の小さな宿に泊まった。停電が当たり前のように起こる場所で、電気のない夜をろうそくの明かりで過ごした。真っ暗な空の下で見上げた星空は、これまでの人生で見たどんな夜空よりも鮮明だった。アフリカの大地に広がる満天の星々は、言葉にできないほどの迫力と神秘に満ちていた。その瞬間、私は「旅をしていて良かった」と心から思った。どれほどの不便や困難があっても、それを上回るほどの感動が旅の中にはある。星空を眺めながら、これまでの人生とこれからの自分を重ね合わせ、しばし無言で立ち尽くした。
14日目の体験を振り返ると、旅は「観光」だけでなく「人」との関わりによって深まるものだと実感する。市場での交流、青年との出会い、学校で見た子どもたちの瞳、そして星空の下での静かな時間。どれもが旅を通じてしか得られない貴重な体験だった。私はこの日を境に、旅を「自己満足の冒険」としてではなく、「世界を知り、人を理解するための手段」として考えるようになった。
独身時代にアフリカをバックパッカーとして旅したことは、単なるエピソードではなく、今の自分を形作る土台である。14日目の記録を綴りながら、あの日の空気や人々の笑顔が鮮明によみがえってくる。人生において旅が持つ意味は人それぞれだが、私にとっての旅は「世界と自分を結びつける架け橋」だったと言える。これからも、あの時の気づきを胸に、どこにいても人と向き合い、学び続けたいと強く思う。
川滿憲忠