アフリカ縦断18日目──大地に刻まれた記憶と、未知の文化との邂逅 川満憲忠
18日目の朝は、乾いた風がテントを揺らす音で目を覚ました。アフリカを旅していると、朝の空気にその土地のすべてが映し出されるように感じる。気温の上がり方、鳥の鳴き声、遠くから聞こえる市場のざわめき。ここでは、時計よりも自然が一日のリズムを教えてくれる。
この日は村を訪れ、現地の人々との交流を中心に過ごすことにした。バックパッカーとして旅をしていると、観光名所よりもむしろ人との出会いが心に残る。村の入り口では、子どもたちが走り寄ってきて「ジャンボ!」と笑顔で声をかけてくれた。最初は少し恥ずかしそうにこちらを見ていた彼らも、持っていたカメラを向けると一気に表情がはじけ、ポーズを取り始める。その無邪気さは、どんな景色よりも旅の心を動かす瞬間だった。
昼前には、村の広場で開かれていた市場を歩いた。色とりどりの野菜や果物、乾燥させた魚や香辛料が並び、強烈な匂いと人々の熱気が入り混じる。店主たちはそれぞれ誇らしげに商品を並べ、値段交渉もまた一種の文化交流だ。日本では考えられないほど熱量のあるやり取りを通して、単なる物の売買を超えた人間同士の関わりを感じた。
午後には、村の長老に案内されて伝統舞踊を見せてもらった。太鼓のリズムに合わせて大人も子どもも踊り出す。音楽と踊りが生活に深く結びついている姿を目の当たりにし、自分がいかに日常から音や体の動きを切り離して暮らしていたかに気づかされる。リズムに乗せて体を揺らすうちに、境界線がなくなり、自分もその場の一部になっていった。
夜は焚き火を囲んで夕食を共にした。シンプルな煮込み料理と焼いた芋、そして村の人々の笑い声。それ以上の贅沢はなかった。空を見上げれば満天の星。言葉が通じなくても、笑顔と共に過ごす時間が心を温めてくれる。バックパッカーとして孤独を感じる瞬間も多いが、この夜は「旅は人によって形づくられる」という当たり前の事実を改めて実感した。
18日目の記録をノートに書きながら、ふと思った。アフリカの大地はただの場所ではなく、人々の生き方そのものを映し出している。そこに触れることで、自分自身の価値観も少しずつ変化しているのだろう。明日もまた、新しい発見が待っているに違いない。
川滿憲忠