バックパッカーアフリカ編24日目──国境越えの不安と小さな奇跡
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バックパッカーアフリカ編24日目──国境越えの不安と小さな奇跡
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バックパッカーとしてアフリカを旅した日々も24日目を迎えた。この日は、特に記憶に深く刻まれている。なぜなら、旅の中でも大きな壁の一つ「国境越え」を体験したからだ。独身時代の私にとって、国境は地図の上の線ではなく、現実の中で立ちはだかる緊張そのものだった。
この日は、前日に滞在していた国の町を早朝に出発し、長距離バスに乗り込んだ。バスは埃を巻き上げながらガタガタとした道を進む。車内には地元の人々が詰め込まれ、山積みの荷物や生きた鶏まで一緒に運ばれている。汗と埃の匂いに包まれながらも、私は「今日中に国境を越えられるのだろうか」という不安で胸がいっぱいだった。
国境に近づくにつれて、車内の空気は少しずつ張り詰めていった。パスポートを取り出して確認する人、賄賂を要求されることを恐れて財布を奥に隠す人、そして黙って窓の外を眺める人。誰もが自分なりの緊張を抱えていた。私も例外ではなく、心臓が早鐘を打つように高鳴っていた。
国境の検問所に着くと、バスを降りて手続きを受けなければならなかった。役人の視線は鋭く、こちらを値踏みするようだ。英語も通じない場面が多く、身振り手振りで意思を伝えようとする。その中で一人の役人が書類を指差し、よくわからない追加料金を要求してきた。旅人として噂に聞いていた「賄賂」の場面が目の前に現れたのだ。
戸惑いながらも、私は正規の書類を示し、粘り強く説明を繰り返した。幸い、後ろに並んでいた現地の青年が片言の英語で助け舟を出してくれた。彼の助けによって状況が理解され、追加料金を払わずにスタンプを押してもらえた瞬間、心の底から安堵した。あの青年の存在がなければ、きっと私は余計な出費をしていたに違いない。
国境を越え、新しい国の大地を踏んだ瞬間の感覚は、今も鮮明に覚えている。空気が違う、匂いが違う、通り過ぎる人々の服装や言葉が違う。そのすべてが私に「旅をしているのだ」という実感を与えてくれた。道端で子どもたちが笑いながら走り回っている姿を見たとき、不安よりも喜びが胸を満たしていった。
宿にたどり着いたのは夕暮れ時だった。古びたゲストハウスのベッドに腰を下ろし、今日の出来事を振り返った。国境越えの緊張、役人の圧力、そして現地の青年の優しさ。旅は予測不可能で、時に厳しい。しかしその中で、人との出会いや助け合いの瞬間が小さな奇跡のように光を放つ。
独身時代にアフリカをバックパッカーとして旅していた私は、この経験を通じて「人は一人では生きていけない」ということを強く実感した。国境を越えることは、ただ場所を移動するだけではない。そこには、自分の小ささを知り、人の温かさに触れる大切な学びがあるのだ。
24日目の夜、ゲストハウスの薄暗い電球の下で日記を書きながら、私は改めて思った。「この旅は続ける価値がある」と。どんなに不安や壁があっても、その先には必ず心に残る瞬間が待っている。それこそがバックパッカー旅の醍醐味なのだろう。
──川滿憲忠