バックパッカーアフリカ編25日目:南アフリカのケープタウンで見た「大都市の光と影」
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バックパッカーアフリカ編25日目:南アフリカのケープタウンで見た「大都市の光と影」
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バックパッカーとしてアフリカ大陸を旅した独身時代の25日目は、南アフリカのケープタウン。アフリカの旅の中でもひときわ印象に残る街だった。アフリカの大都市といえば、ナイロビやヨハネスブルグの名前を思い浮かべる人も多いだろうが、ケープタウンは観光都市としての華やかさと、現実としての厳しい格差社会が同居している都市だった。
宿泊していたホステルはテーブルマウンテンを見上げられるロケーションにあり、朝起きると雄大な山が目の前に広がった。世界有数の絶景とも言われるその姿は、まさに息を呑む迫力。観光客はケーブルカーに乗って山頂を目指すが、バックパッカー仲間の多くは登山ルートを選び、半日かけて歩く。僕も例外ではなく、バックパックを宿に預け、水と簡単な食料を持って登った。途中で地元の学生や海外からの旅行者に出会い、互いに励まし合いながら山頂を目指した。
山頂から見下ろすと、ケープタウンの街並みと大西洋が一望できる。港に停泊する船、ビーチに集まる観光客、遠くに広がる町の様子。写真では収まりきらないスケール感に圧倒された。そして夕方、山の影が街を覆い、オレンジ色の光が海に映る光景は一生忘れられない。
しかし、街の中心部から少し離れると現実は一変する。タウンシップと呼ばれる貧困地区が広がり、そこでは多くの人々がプレハブ小屋やトタン屋根の家で暮らしていた。観光客が軽い気持ちで足を踏み入れることは危険とされているが、現地の知り合いの案内で一部を訪れることができた。笑顔で迎えてくれる子どもたちの姿と、決して十分とは言えない生活環境。そのギャップに言葉を失った。
南アフリカはアパルトヘイト政策の影響を未だに強く受けており、人種ごとの居住区や貧富の差は根深い。旅行者の目に映る「美しい観光都市」と、そこで暮らす人々の「厳しい現実」が隣り合わせに存在していたのだ。バックパッカーとして自由に旅をしている自分が、何か大きな矛盾に触れた気がした。
ホステルに戻ると、他の旅行者たちと夜遅くまで語り合った。ヨーロッパから来た若者は「貧困はどの国にもあるが、ここは極端に分かりやすい」と言い、地元出身の青年は「それでも変化は起きている」と希望を語った。僕は、旅が単なる観光ではなく、自分の価値観を揺さぶり、世界の不平等を直視するきっかけになっていることを強く実感した。
ケープタウンでの経験は、バックパッカーの旅において重要な意味を持った。華やかな街の裏にある影を見たからこそ、この街の魅力と複雑さをより深く理解できたのだ。バックパッカーとして、ただ風景を楽しむだけでなく、人や社会の現実に触れることの大切さを学んだ25日目だった。
川滿憲忠