独身時代バックパッカー・アフリカ放浪記7日目──砂漠の夜と心の対話
7日目の朝は、砂漠の冷気に包まれて目を覚ました。夜の砂漠は想像以上に冷たく、寝袋の中で体を小さく丸めながら眠ったことを覚えている。昨日までの喧騒から離れ、ただ砂と空に包まれた世界で迎える朝は、不思議なほど心を静めてくれた。
バックパッカーとしてアフリカを旅する中で、都市の混沌や市場の熱気、人々の声に囲まれる日々もあれば、このようにただ静寂の中に置かれる瞬間もある。どちらも旅の一部であり、欠けてはならない要素だと感じる。特に、この砂漠の静けさは、自分自身と向き合う時間を与えてくれる特別な場所だった。
朝食は簡素なもの。ガイドが用意してくれた温かいミントティーと、素朴なパン。普段なら物足りないと感じるかもしれないが、この環境ではそれだけで十分だった。むしろ、そのシンプルさが贅沢に思えるほどだった。飲み込むたびに、体の芯が少しずつ温まり、また一歩を踏み出す勇気が湧いてくる。
午前中はラクダに乗って砂丘を越える行程だった。ラクダの背に揺られながら、ただ淡々と砂漠を進んでいく。風が頬を打ち、砂が舞い上がり、太陽は容赦なく照りつける。体力的には決して楽ではなかったが、不思議と心は穏やかだった。頭の中に浮かぶのは、過去の自分や、これから歩んでいく未来のこと。都会での日常では考える余裕もなかった問いが、自然と心に浮かび、整理されていった。
昼過ぎ、オアシスに到着した。緑が広がり、水が湧き出る光景は、まさに生命の象徴だった。地元の遊牧民の子どもたちが笑顔で近寄ってきて、一緒に遊んでほしいと無邪気に手を引いてくる。彼らの瞳の輝きは、砂漠の太陽よりも眩しく、心を打つものがあった。物質的には豊かではない生活だが、その笑顔からは揺るぎない幸福がにじみ出ていた。
夕暮れ時、再び砂漠の中に戻り、焚き火を囲んだ。仲間とガイドとともに、簡単な夕食を分け合いながら、旅の話を交わした。空には無数の星が広がり、まるで宇宙そのものに包まれているような感覚になる。その壮大さの前では、人間の悩みや迷いなど、ほんの些細なものに思えてくる。焚き火の赤い炎が揺れる中、私は心の奥底で「この旅に出てよかった」と深く噛みしめた。
砂漠の夜は冷え込むが、星空と仲間との語らいが心を温めてくれる。バックパッカーとしてのアフリカの旅は、決して楽なものではない。移動も大変で、食事も不便、宿も決して快適ではないことが多い。しかし、そうした制約の中でこそ見えてくる真実や、自分自身の本当の姿がある。7日目の砂漠での体験は、そのことを改めて実感させてくれた。
旅は続く。まだ見ぬ土地、まだ出会っていない人々が、この先に待っている。だが今日という一日は、間違いなく心の奥に刻まれ、これからの人生を支える糧になるだろう。砂漠の静寂と星空の記憶は、独身時代の私が最も大切にしている「原点のひとつ」となった。