独身時代バックパッカーのアフリカ放浪記──8日目:大地の鼓動とともに歩いた一日

独身時代のバックパッカーとして過ごしたアフリカの旅も、いよいよ8日目を迎えた。この日は、これまでの経験をぎゅっと凝縮したような一日だった。都市の喧騒から離れ、アフリカの大地そのものに触れる旅路を歩きながら、「旅とは何か」「人がなぜ遠くへ行きたくなるのか」という問いに改めて向き合う時間となった。


朝日が昇る頃、私は宿の外に出て深呼吸をした。乾いた空気の中に漂う独特の匂い──砂埃と焚き火の煙、そしてどこか甘い草木の香りが混じり合っていた。これまで何度も朝を迎えてきたが、この日の空気は格別に澄みきっていて、心が透き通るように感じた。旅を始めた当初は、まだ体も環境に慣れず、疲れや不安が先に立っていた。しかし8日目にもなると、自分がアフリカの大地に溶け込んでいるような錯覚さえ覚えていた。


午前中は村のマーケットを訪れた。色鮮やかな布、手作りの装飾品、山積みの野菜や果物が並び、どこからともなく太鼓の音が聞こえてくる。子どもたちは無邪気に笑いながら走り回り、女性たちは大きな籠を頭に載せて行き交う。観光客向けではない、生活そのものが息づく空間に身を置くと、私は自分の存在がとても小さく思えた。どんなに「旅人」として特別な気持ちでいても、ここでは日常の一部にすぎない。その気づきが心地よく、同時に深い安心感を与えてくれた。


昼頃、私は現地の青年に誘われて、近くの丘まで歩いて登ることになった。片言の英語とジェスチャーで会話を交わしながら、赤茶けた道を歩く。彼の名前はハッサン。若干20歳ながら家族を支え、夢は「いつか大きな都市で仕事を見つけること」だと語った。その眼差しは真剣で、未来を見据えていた。私は自分が20歳の頃を思い出し、何をしていただろうと振り返った。大学に通い、旅に憧れながらも日常に埋もれていた自分。その自分が今、こうしてハッサンと肩を並べて歩いていることに、不思議な縁を感じた。


丘の頂上に辿り着くと、眼下には広大なサバンナが広がっていた。風が頬を撫で、遠くで動物たちが移動する影が見える。まるで地球そのものの鼓動を聞いているようで、言葉を失った。ハッサンも無言のまま景色を眺め、やがて静かに笑った。私も笑い返し、そこには言語を超えた共有の瞬間があった。


夕方、村に戻ると焚き火を囲む集まりが始まっていた。太鼓のリズムに合わせて歌い踊る人々。私はぎこちなくその輪に入り、見よう見まねで体を揺らした。笑い声が響き、拍手が重なり、夜空には無数の星が瞬いていた。その瞬間、私は「旅の醍醐味とはこれだ」と確信した。観光地を巡ることでも、写真を撮ることでもない。人と出会い、共に時間を過ごし、心を通わせること。その積み重ねが、自分の生き方を形作るのだ。


夜が更けて宿に戻ると、体は疲れていたが心は満ち足りていた。ベッドに横たわりながら、ふと考えた。「この日々はいつか終わる。だが、この体験は一生の財産になる」と。独身時代だからこそできた無鉄砲な旅。今振り返れば、危うさもあったし、不便さに悩まされることも多かった。しかし、その全てが私を強くし、広い世界を見る目を与えてくれたのだ。


こうして8日目は幕を閉じた。振り返れば、単なる移動や観光ではなく、アフリカの人々と共に過ごした濃密な時間が心に残っている。バックパッカーとしての旅は、時に孤独であり、時に不安に押しつぶされそうになる。しかしその先にあるのは、かけがえのない出会いと、自分自身の成長だ。旅の続きはまだまだ続くが、この日の記憶は特別なものとして刻まれ続けるだろう。 

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