韓国バックパッカー旅・最終日──軍事境界線から帰路へ、独身時代の自分に刻んだもの
独身時代に挑んだ「韓国・軍事境界線バックパッカー旅」。その4泊5日の最終日、ついに帰国の日を迎えることになった。これまでの数日間は、ソウルの雑踏を歩き、非武装地帯(DMZ)を訪れ、軍事境界線という歴史の重みを肌で感じ、そして宿泊先で出会う人々との交流を楽しみながら過ごしてきた。今振り返ると、旅そのものが学びであり、挑戦であり、心の奥底に刻み込まれる記憶の連続だったと感じる。そしてこの最終日は「旅の終わり方」について考えさせられる一日になった。
### 朝のソウル、旅の締めくくり
最終日の朝、まだ薄暗いうちに起きた。バックパッカー旅ではいつもそうなのだが、帰国の日の朝は少しだけ寂しい。これまで歩き回った街も、慣れ親しんだ屋台の匂いも、今日はもう見納めかと思うと胸が締め付けられるような気分になる。
ホステルの共同キッチンで、昨晩買っておいたキンパとバナナ牛乳を簡単な朝食にする。横では韓国人の大学生グループが、これから南部の釜山まで向かう準備をしていた。彼らと短い英語で言葉を交わし、笑い合いながら「良い旅を」と互いに送り合った。旅人同士のこの瞬間的なつながりが、何より心地よかった。
### 市場を歩きながら感じた「余韻」
チェックアウトまで少し時間があったので、ソウル市内の市場を歩いてみることにした。南大門市場の活気は、朝からすでに熱気に包まれていた。鉄板で焼かれるホットクの甘い香り、威勢のいい掛け声、カラフルに並ぶ韓国海苔や雑貨。どれもが旅の最後を彩る光景に見えた。
ここで小さな土産を買った。家族へのお土産に韓国海苔、そして自分用には軍事境界線ツアーで見かけた非武装地帯のバッジ。観光地のグッズとしては安っぽいかもしれないが、自分にとっては「確かにそこに行った」という証のように思えた。
### 空港までの道のり
ソウル駅から空港鉄道に乗り、仁川国際空港へと向かう。電車の窓から流れる景色を眺めながら、4泊5日の出来事をひとつひとつ振り返った。初日に戸惑いながら街を歩いたこと、二日目の軍事境界線で感じた張り詰めた空気、三日目に南山の展望台から夜景を眺めた瞬間、そして四日目に出会った旅人たちとの語り合い。それぞれの場面が、まるで一本の映画のように脳裏に蘇ってくる。
電車の中では同じく空港へ向かう観光客も多く、キャリーケースを引く音やガイドブックをめくる音があちこちで聞こえた。自分はリュックひとつ。バックパッカーとしての旅は荷物が少ない分、こうした場面で「軽やかさ」を実感する瞬間でもあった。
### 仁川国際空港での時間
仁川空港に到着すると、近代的で巨大なターミナルが目に飛び込んできた。ソウル市内の歴史的な風景や軍事境界線の緊張感とは打って変わり、ここは未来的で洗練された空間だ。免税店が立ち並び、行き交う人々の多様な国籍が交錯している。
搭乗手続きを済ませ、ゲート近くの椅子に座りながら、この旅で感じたことをノートに書き留めた。「旅は出会い」「歴史は現地で感じるもの」「独身時代だからこそできる挑戦」。この3つの言葉が強く残った。特に軍事境界線を訪れたことは、単なる観光を超えて「平和の重み」を自分自身の体で理解する経験となった。
### 機内からの景色と小さな決意
飛行機が滑走路を走り出し、やがて空へ舞い上がる瞬間、胸にこみ上げる感情があった。旅を終える寂しさと同時に、「また旅に出よう」という小さな決意だ。窓の外に広がる雲海は、まるで新しい日常への橋渡しのように見えた。
独身時代のこの旅は、自分にとって「一人で世界と向き合う」経験だった。言葉の壁、不安、知らない土地。すべてが挑戦であり、そして乗り越えることで自信になった。結婚して子どもを持つようになった今では同じ旅の仕方はできないかもしれないが、あの時に得た「旅人としての視点」は今も生きている。
### 帰国後に思ったこと
日本に帰国すると、見慣れた街並みと聞き慣れた日本語にホッとする一方で、「旅の余韻」にしばらく浸っていた。何気ない日常が、少しだけ違って見える。駅で並ぶ人々の整然とした行動や、コンビニの便利さに感心したり、逆に韓国で感じた活気を懐かしく思い出したり。旅をすると、自分の暮らしを外から眺め直すことができるのだと思う。
### 旅の終わりに──独身時代の宝物
こうして4泊5日の韓国バックパッカー旅は幕を閉じた。軍事境界線という緊張感あふれる場所を訪れたことは、人生の中でも特別な経験のひとつになった。旅の最中に出会った人々や景色はすべて「独身時代の自分」が刻んだ宝物であり、振り返るたびに勇気を与えてくれる記憶になっている。
今後また子どもたちと旅を重ねる中でも、この経験が必ず生きていくだろう。旅は「その瞬間限り」ではなく、人生にずっと影響を与え続けるもの。そう信じて、また次の旅を夢見ている。
川滿憲忠