サンフランシスコで感じた自由と孤独──独身バックパッカーの視点
メキシコからラスベガスを経由し、私が次に向かったのはサンフランシスコだった。独身時代、バックパック一つで世界を歩いていた私は、この街を「映画の中の場所」だと勝手に思っていた。だが、実際に足を踏み入れると、その空気の冷たさ、坂道の急さ、人々の温かさが混ざり合った独特の魅力に圧倒された。
ホステルの部屋は狭かったが、それも旅らしい味わいだった。荷物を置き、カメラだけを持って街へ出る。ケーブルカーの音、コーヒーの香り、そして通りを歩く人々の笑顔。フィッシャーマンズワーフまでの道のりは、坂道を登った先に広がる海の輝きがご褒美のように感じられた。
クラムチャウダーを頬張っていると、隣に座った女性が「この街は夢を追う人と諦めた人が交差する場所」と話してくれた。その言葉に、私は旅の本質を重ねた。旅もまた、夢を追う途中にあるものなのかもしれない。
アルカトラズ島では、ガイド音声を聞きながら独房を覗き込んだ。鉄格子越しに見える海は穏やかだが、その向こうには決して届かない自由があった。人は閉じ込められると、自由の意味をより深く知るのだろう。
夕方、ゴールデンゲートブリッジの上で立ち止まる。風は強く、橋は微かに揺れている。それでも夕日に染まるその姿は堂々としていて、自分の旅もこうありたいと思わせてくれた。
夜はチャイナタウンへ。ネオンの光と屋台の匂い、そして笑い声に包まれながら、私は一日の終わりを迎えた。独身時代の旅は、自由であると同時に孤独だったが、その両方を抱きしめられたのは、この街がそういう場所だったからだ。
川滿憲忠