迷路のような街、ハバナ旧市街で見つけた旅の自由

 ハバナの朝は、いつも音と香りから始まる。宿の窓を開けると、通りからサルサのリズムとコーヒーの香りが入り込む。今日は地図を持たず、旧市街の細い路地を歩くことに決めた。


石畳の上を歩くクラシックカー、壁の色あせた建物、バルコニーから垂れる洗濯物。すべてが絵になる風景だ。観光客向けの店も多いが、路地を一本外れれば地元の人の生活がそのまま広がっている。パンを焼く匂い、子どもたちの笑い声、修理工場の金属音。それらが同時に響く街。


市場では果物や香辛料が並び、売り子たちが陽気に声をかけてくる。マンゴーを一つ買ってその場でかじると、果汁が手に滴り落ちるほど甘い。屋台で食べたエンパナーダは外がパリッと、中はジューシー。これこそ旅の醍醐味だと思う。


午後はマレコン通りへ向かう。海沿いの道には釣り人や恋人たち、観光客が混ざり合い、それぞれが自分の時間を過ごしている。海風を受けながら、ただ座って景色を眺めるだけで満たされる瞬間がある。


夕暮れ、海がオレンジ色に染まる頃、地元のミュージシャンが演奏を始めた。自然と観客が集まり、踊る人、歌う人、ただ笑う人。そこには肩書きも立場も関係ない。音楽と海風がすべてを溶かしていく。


夜、再び旧市街を歩けば、昼とは違う熱気が街を包んでいる。バーの扉を開け、ラムを一杯だけ頼む。隣に座った男性と旅の話をすると、「ここは迷うための街だ」と笑った。その言葉が妙に胸に残った。


迷ってこそ見つかる景色がある。今日もまた、そのことをハバナが教えてくれた。

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