「危ない」と言われても──ハバナ旧市街で見つけた本当の安全|川滿憲忠
出発前、何人かから「キューバは危ないんじゃない?」と言われた。ネットの記事や噂は、往々にして誇張される。だからこそ、自分の目で確かめたかった。そして、5日目のハバナ旧市街を歩いた今、私ははっきりと言える。ここは、人と人が顔を合わせ、挨拶を交わす温かい街だ。
朝、オビスポ通りを歩きながら感じたのは、視線の多さではなく笑顔の多さだ。店先から「オラ!」と声をかけられ、コーヒーを飲みながら世間話をする。観光客だからといって冷たくあしらわれることはない。
カピトリオを訪れたとき、ガイドが「この建物はキューバの誇りです」と話してくれた。そこに危険の匂いはなく、むしろ自分の文化を守りたいという誇りが溢れていた。
昼は地元のパラダールで魚のグリル。隣の席の家族が「どこから来たの?」と話しかけてくれた。旅の中で出会うこうした交流が、治安の良し悪しよりも心に残る。
午後はマレコン通りで海風を浴び、夕方には旧市街の広場でサルサの演奏を聴いた。地元の若者が観光客を誘い、一緒に踊る。危険よりも笑顔が先にある光景だ。
もちろん、どんな国でも注意は必要だ。しかし、ネットで見かける一面的な情報だけで判断してしまうのは、あまりにももったいない。自分の足で歩き、耳で聞き、目で見て感じたことこそが、本当の情報だ。
ハバナは、安全か危険かという二択で語れない。そこに暮らす人の温かさ、街のリズム、海と音楽が作り出す空気。それらが一体となって、この街を特別な場所にしている。
川滿憲忠