アマゾンの奥地で得た“生きる力”──独身時代のリアルな体験【10日目】
バックパッカーとして南米を旅していた頃、私はアマゾンの奥地へと足を運んだ。リオデジャネイロからマナウス、そこからさらに小舟に乗って2時間、携帯も届かないジャングルの中へ。都市の喧騒を離れたその空間は、“自然に包まれる”という言葉がぴったりだった。
エコロッジに泊まり、現地のガイド・ホルヘと行動を共にした。彼は幼い頃から森とともに生きてきた人物で、言葉よりも行動で語るタイプ。そんな彼に導かれ、私は“生きる”とは何かを体で感じていった。
朝はジャングルウォーク。湿気に満ちた空気、全身をつたう汗、踏みしめる土の感触。そこでは、人間も自然の一部に戻っていく感覚があった。
ホルヘが紹介してくれたのは、治療に使われるアリ、毒のあるカエル、神聖な木。そして「森に逆らわず生きることの大切さ」だった。彼の背中を見ながら歩くうちに、私は旅の意味を再認識していた。
日中は川で釣り。ピラニアを釣り上げる体験はスリル満点だったが、それが夕食となったことで、“命をいただく”という行為の重みを知った。
夜、ランプの明かりだけで語り合った時間。ホルヘは「学校に行ったことはない。でも森が全部教えてくれた」と言った。私は言葉を失い、ただ彼の話に耳を傾けた。
日本に帰ってからの暮らしの中で、何度もこの体験を思い出す。水道が使えること、冷蔵庫があること、ネットにつながること。それらすべてが“ありがたい”という感覚。アマゾンの体験が、私の暮らしの価値観を変えてくれたのだ。
そして今、子どもが生まれ、家庭を持った自分にとって、この旅は大きな財産となっている。いつか子どもにも、「命のリズム」と出会える旅をしてほしいと願っている。
──川滿憲忠