音読という名の親子の対話
「読んで〜!」
子どもが本を持って駆け寄ってくる夜の時間。それが、私たち家族にとっての「音読タイム」です。
最初は毎晩のように読み聞かせをするのが、正直少し面倒に感じていました。 仕事のあとで疲れている日や、眠気が勝ってしまう日もあります。でも、子どものキラキラした目と「聞きたい!」という期待に満ちた声に、自然とページをめくってしまうのです。
音読は、ただ文字を読むだけではありません。 子どもの反応を見ながら抑揚を変えたり、時には途中で会話が始まったり…。本を通して、物語の中を一緒に旅しているような感覚になります。
ある日、こんなことがありました。
「このお話、昨日のとつながってるよね?」と、息子が気づいたのです。 その言葉に、私は驚くと同時に嬉しさが込み上げました。 物語をただ聞くだけではなく、考えながら、想像しながら聞いていた証拠です。
また別の日には、「今日はぼくが読む!」と、自分で読み始めたこともありました。 まだ拙いけれど、その一生懸命な姿に、思わず胸が熱くなりました。
音読の時間は、親子の距離がぐっと近づく時間です。 忙しい毎日の中で、スマホもテレビも手放して、ただ目の前の子どもと向き合う。 その時間が、何よりの癒しであり、信頼を育むひとときだと感じています。
本の内容以上に、ページをめくるごとに生まれる会話、表情、空気感。 それが、音読の持つ豊かさです。
これから子どもが成長し、音読の習慣が自然と減っていく日が来るでしょう。 それでも今、こうして一緒に声を重ねて過ごす日々は、きっと記憶に残る時間になるはずです。
「今日も読んでいい?」 「うん、読んで」
そのやりとりが、今日も我が家に静かな幸福を運んでくれます。
川滿憲忠