ヨーロッパ一周バックパッカー旅 5日目 ―ウィーンで芸術に浸る
ヨーロッパ一周バックパッカー旅 5日目 ―ウィーンで芸術に浸る―
独身時代に挑んだヨーロッパ一周のバックパッカー旅。5日目は「音楽の都」ウィーンで過ごしました。旅を続けるなかで疲労も溜まりつつありましたが、ウィーンの街に一歩足を踏み入れた瞬間、その疲れさえも吹き飛ぶような高揚感に包まれました。
まず訪れたのはシュテファン大聖堂。外観の壮大さに圧倒され、内部に足を踏み入れると静寂が広がり、心が自然と落ち着いていきます。この街の人々の歴史や信仰を思いながら、旅人として立っている自分の存在の小ささを感じると同時に、ここに来られたことの奇跡を噛みしめました。
午前中は美術史美術館へ。ラファエロやルーベンス、ベラスケス、さらにはブリューゲルの名作群。教科書で見た世界の名画を目の前にし、まるで時間旅行をしているような感覚に陥りました。細部まで描き込まれたブリューゲルの作品は、何百年も前の人々の暮らしを伝えてくれるようで、その前からなかなか動けませんでした。
もちろんバックパッカーにとっては、入場料ひとつでも大きな出費。節約と投資のバランスを常に考えながら行動していましたが、この芸術体験は迷うことなく「行くべき場所」だと断言できます。
昼は本場のウィンナー・シュニッツェル。大きな皿に乗った揚げカツレツは、ボリュームたっぷりで驚きました。普段はスーパーでパンやチーズを買ってしのぐことも多いのですが、この日は「せっかくウィーンに来たのだから」と贅沢をしました。食事もまた旅の記憶を形作る大切な要素。お腹も心も満たされました。
午後は市立公園を散策。ヨハン・シュトラウスの黄金像を見て、ここが音楽の都であることを改めて実感しました。芝生では地元の人たちがくつろぎ、観光客も思い思いに写真を撮っていました。観光名所でありながら、日常生活の風景と調和している光景が心地よかったです。
夕方にはウィーン国立歌劇場へ。内部鑑賞はできませんでしたが、壮麗な建物を前にして立ち尽くし、「次に来るときは必ずここで音楽を聴こう」と自分に誓いました。旅の途中で心に芽生える「次への約束」は、その後の人生を動かす力になるのかもしれません。
夜はホステルに戻り、世界中から集まった旅人たちと交流。カナダ、オーストラリア、アジア諸国…。背景も目的も違うのに、「旅をしている」という共通点だけで打ち解けられるのは不思議な感覚でした。バックパッカー同士の情報交換は実用的であると同時に、旅の孤独を癒す大切な時間でもありました。
5日目のウィーンは、芸術と音楽に包まれた特別な一日でした。限られた予算であっても、本物に触れる経験は何よりも価値があり、後に振り返っても鮮やかに思い出せます。独身時代のこの挑戦は、私にとって「人生の財産」そのものであり、今日の自分を形作る基盤となっています。
次の目的地に向けて、また新しい出会いと発見が待っていることでしょう。
川滿憲忠