おやつにおにぎりという選択──「甘いものだけが正解」ではない子育て
「おやつといえば甘いお菓子」という固定観念は、子育てをしていると特に強く感じるものです。スーパーのお菓子売り場には子ども向けの商品がずらりと並び、テレビやネットの広告も「子どものおやつ=スナックやチョコレート」と刷り込みをしてくる。そんな環境で親は「おやつを用意するなら甘いものを与えなければ」と思い込みがちです。
しかし、私は実際に子ども(1歳と2歳)を育てながら気づきました。おやつは甘いお菓子である必要はまったくない。むしろ、炊きたてのご飯を小さく握ったおにぎりこそが、子どもにとって理想的なおやつになり得るということに。
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### ■「おやつ=お菓子」の誤解
そもそも「おやつ」という言葉は、江戸時代に「八つ時(午後2時頃)」に軽食をとる習慣から生まれたと言われています。つまり、もともとの意味は「間食」「補食」。本来は食事と食事の間に不足するエネルギーを補うものなのです。
ところが現代では「おやつ=甘いお菓子」というイメージが強く、さらにSNSや情報サイトでも「子どものおやつには〇〇が便利」「スイーツで子どもが笑顔に」といった記事が氾濫しています。まるで甘いお菓子を与えないと子どもが不幸になるかのような論調さえ見られます。
しかし、それはただの商業的な刷り込みに過ぎません。子どもにとって本当に必要なのは、砂糖や添加物ではなく、成長に必要なエネルギー。つまり米や芋といった自然の炭水化物です。
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### ■我が家のおやつにおにぎりを取り入れてみた
我が家には1歳と2歳の息子がいます。ある日、おやつの時間にふと「おにぎりを出してみよう」と思い立ち、小さなおにぎりを作って出してみました。すると、子どもたちは嬉しそうに頬張り、「おいしい!」と満面の笑み。
そのとき、私の中で何かがほどけました。
「おやつは甘いお菓子でなくてもいいんだ」
「子どもが満足して、しかも栄養的にも安心できるなら、それが一番だ」
以来、我が家では「おやつにおにぎり」が当たり前になりました。
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### ■メリット:おにぎりが持つ力
おにぎりは決して特別な食べ物ではありません。しかし、そこにこそ大きな価値があります。
・炭水化物中心で、成長期の子どもに必要なエネルギー源になる
・塩と海苔だけでも十分美味しく、添加物を気にせずに済む
・手軽に作れて、すぐに食べられる
そして何よりも「親が握る」という行為そのものが、子どもに安心感を与えるのです。
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### ■カウンター視点:「お菓子を与えない親=可哀想」ではない
ネット上には「子どもにお菓子をあげないのは可哀想」「友達と話題を合わせられなくなる」といった声もあります。実際に私も「え?おやつにおにぎり?」と驚かれたことがあります。
しかし、これは一面的な見方です。
本当に可哀想なのは、子どもの健康を害するほど砂糖や油脂を過剰に摂らせてしまうことではないでしょうか。
「おやつ=お菓子でなければいけない」という思い込みは、親に余計なプレッシャーを与え、子どもの食生活を狭めてしまいます。
私は「甘いものも時にはよし。でも日常はおにぎりで十分」という柔軟な選択こそが健全だと考えます。
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### ■食べる姿を子どもは真似する
印象的だったのは、ある日私がキャベツのサラダを食べていると、息子が「ちょうだい」と言ってきたこと。苦いかな?と思いながら渡すと、意外にも「おいしい」と言って食べました。
この経験から学んだのは、子どもは親の食べる姿をよく観察しているということ。
親が「これは体にいいね」「おいしいね」と言いながら食べると、それが子どもにとって“食事は楽しいもの”という体験につながるのです。
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### ■おやつは「体験」
おやつは単にお腹を満たすだけでなく、親子のコミュニケーションの時間でもあります。小さなおにぎりに海苔を巻いたり、鮭や梅干しを少し入れてみたり。子どもにとってそれは「新しい発見」であり、「自分のために用意してくれた」という嬉しい体験です。
甘いお菓子で笑顔になることもあれば、おにぎりで安心することもある。
両方の経験が「食の多様性」を育むと私は信じています。
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### ■結論:「おやつにおにぎり」でいい
私自身、幼い頃のおやつの思い出は、必ずしもお菓子だけではありません。焼き芋やゆで卵、おにぎり……。特別なご馳走ではないけれど、心に残っているのは「家族と一緒に食べた時間」でした。
だからこそ今、子どもたちと一緒に小さなおにぎりを食べるこの瞬間が、未来の思い出になると信じています。
「おやつ=お菓子でなければいけない」という偏った価値観に縛られる必要はない。
大切なのは「子どもにとって安心で満足できる食の体験」を積み重ねることです。
おやつにおにぎり。
それはシンプルだけれど、とても豊かな選択なのです。
川滿憲忠