ヨーロッパ一周バックパッカー13日目:ザグレブの青空と市場の香り

 

ヨーロッパ一周バックパッカー13日目:ザグレブの青空と市場の香り

ブダペストから列車で国境を越え、たどり着いたのはクロアチアの首都・ザグレブ。ヨーロッパの中でもまだ素朴さと人の温もりが残る街だと聞いていた。駅に降り立った瞬間、どこか懐かしい匂いがした。カフェのコーヒーの香りと、夏の陽射しの混ざる空気。旅を続けるうちに、そうした香りや温度が、土地の記憶として残っていくのだと気づく。

聖マルコ教会と穏やかな午後

旧市街の坂を登ると、白壁にカラフルな屋根瓦を持つ聖マルコ教会が現れる。観光客が少なく、穏やかで時間が止まったような場所だった。ベンチに座っていると、現地の学生が声をかけてきた。

「どこから来たの?」
「日本だよ。」

笑顔で返すと、彼は「日本人は礼儀正しいって聞いた」と言った。たった数分の会話でも、見知らぬ土地で人と心が通う瞬間は旅の醍醐味だ。別れ際、彼が手を振ってくれた姿が、今でも目に浮かぶ。

ドラツ市場で感じた“生きる匂い”

昼頃、宿のオーナーにすすめられた青空市場「ドラツ市場」へ。広場いっぱいに赤いパラソルが並び、野菜や果物が山のように積まれていた。真っ赤なパプリカ、甘酸っぱい桃、そしてパンを焼く香ばしい匂い。おばあちゃんの屋台で桃を買うと、「一つおまけね」と笑顔で渡してくれた。

その優しさが、どんな観光名所よりも心に沁みた。旅を続けるほど、こういう何気ない人との触れ合いが、心の支えになっていく。

カフェ文化に溶け込む午後

ザグレブは“カフェの街”とも呼ばれるほど、昼下がりにはどこも満席だった。私も街角のカフェに腰を下ろし、エスプレッソを注文する。隣のテーブルでは、年配の男性たちが新聞を広げて政治談義をしていた。熱く語りながらも、笑顔を絶やさない。

旅の途中だと話すと、彼らは拍手してくれた。異国でたったそれだけのことが、胸の奥をじんと温める。言葉が通じなくても、人の温もりは伝わるのだと実感する。

丘の上の夕景とギターの音色

夕方、グリチェ丘へ登る。オレンジ色の屋根が連なり、教会の塔が長い影を落としていた。夕陽に照らされた街は、まるで絵画のように美しかった。丘の上でギターを弾く青年がいて、その音が風に乗って広がる。知らない人たちが次々と立ち止まり、静かに聴き入っていた。

音楽には国境がない。その瞬間、世界がひとつにつながる気がした。

ザグレブの夜に思ったこと

夜、ホステル近くのバーで地元のワインを一杯だけ飲んだ。安宿の壁越しに聞こえる笑い声が、旅の疲れを癒してくれる。華やかさよりも、“人の暮らし”が息づく街が好きだと気づく。観光地よりも、生活の香りがする場所に惹かれていく。

旅をしていると、自分の中の「豊かさ」の基準が少しずつ変わっていく。便利さでも、物の多さでもない。見知らぬ誰かの優しさと、何気ない日常の瞬間に心が動くこと。それこそが旅の本質なのだと思う。

明日はアドリア海へ向かう。心の中で、波の音がもう聞こえていた。

川滿憲忠

ラベル:ヨーロッパ一周, クロアチア, ザグレブ, バックパッカー, 旅日記, 川滿憲忠

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