風情と出会う、飛騨高山の週末旅
ふと思い立って、週末に飛騨高山へ行ってきました。
朝早く家を出て電車に揺られること約3時間。徐々に深まる山々の景色と澄んだ空気が、心を穏やかに整えてくれました。名古屋を越えたあたりから、空気が変わったことに気づきます。どこか懐かしくて、静かな気持ちになれる場所に向かっている予感がしました。
高山駅に到着後、まず向かったのは有名な古い町並み。江戸時代の商人町として栄えたこの場所は、今もその趣きをしっかりと残していました。黒塗りの格子戸や白壁の町家、手作りの土産品が並ぶ軒先が続き、歩くだけでまるで時代劇の世界に迷い込んだような気持ちになります。
ちょうど開催中だった「宮川朝市」にも立ち寄りました。地元のおばあちゃんたちが並べる野菜や漬物、お餅やジャムの香りに誘われて、つい長居してしまいます。赤かぶ漬けや、よもぎ餅を購入し、袋を手に持つだけで旅気分が高まります。
お昼には楽しみにしていた飛騨牛を堪能。目の前で炭火焼きされたお肉は、香ばしくジューシーで、思わず笑顔がこぼれました。やはり地元の味は、旅先でこそ真価を発揮します。
午後は高山陣屋を訪れました。江戸時代の代官所として使われていた建物で、日本で唯一現存している貴重な施設です。畳に座って障子越しに庭を眺めていると、不思議なほど時間がゆっくりと流れているように感じられました。
帰り際には、宮川沿いの小さなカフェでコーヒーを一杯。民芸家具に囲まれた空間で、飛騨リンゴのタルトと静かな音楽に包まれながら過ごす時間は、心を優しくほどいてくれるようでした。
飛騨高山の旅は、ほんの数時間だったにもかかわらず、まるで長い時間を過ごしたような感覚になりました。静けさとあたたかさに満ちた町で、少しだけ日常から離れ、自分自身に立ち返る時間を持つことができました。
また別の季節に、この町を訪れてみたい。春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪景色。きっとそれぞれに違った顔を見せてくれるはずです。
川滿憲忠