ゆっくり進むSLの旅が、心を整えてくれる理由

遠くから「ポーッ」と響く汽笛。耳にした瞬間、どこか懐かしさが胸の奥を通り過ぎます。

久しぶりにSL、蒸気機関車に乗ってきました。岐阜県と愛知県を走る「明知鉄道」。春には桜、冬は霜が降りる田園風景の中を、大きな機関車が煙を上げながら走る姿に、心が静かに満たされていきます。

乗車中に思い出したのは、祖父と行った旅。鉄道が好きだった祖父が、「この音を覚えておけ」と連れていってくれた日。車窓からの景色、地元の人々の笑顔、木製のベンチに石炭の香り……すべてが今も記憶に残っています。

SLの車内は、今の鉄道とは違い、手動で開ける窓、風が通るベンチシート。快適とはいえないけれど、どこか懐かしく、心地よい空間です。

窓を開ければ、石炭のにおいが混じった風。リズムよく響くガタンゴトンという音と、シュッシュッという蒸気の吐息。言葉を交わさなくても、ただそこにいるだけで満たされていく感覚が広がります。

途中停車した駅で、地元の方が手作りの駅弁や和菓子を販売してくれていました。旅の思い出が、こうした出会いによってより深まっていくのも、SL旅ならではの魅力です。

SLの旅に「速さ」はありません。でも「豊かさ」があります。

現代はスピード重視で、時間に追われる毎日。そんなときこそ、あえてゆっくり進むSLに揺られて、自分自身の中を見つめる時間が大切だと感じます。

最後尾から見た、カーブを描く線路。その風景に、自分の歩んできた人生が重なって見えました。まっすぐじゃないけれど、確かに続いている道です。

またSLに乗りたいと思いました。季節を変えて。誰かと一緒に、あるいは一人でも。あの汽笛の音が響くたびに、心が静かにリセットされていくのだから。

川滿憲忠

note版はこちら:note
アメブロ版はこちら:アメブロ

このブログの人気の投稿

千葉のあのランドシリーズ・クルーズ船編(1日目)出航!バハマの海に夢を乗せて 川滿憲忠

本物のアウラニへ!千葉じゃない、夢のハワイ1日目

千葉のあのランドシリーズ|2日目 ディズニーシー再訪とミラコスタで過ごす癒しのひととき