キンキンに冷えたビールと、静かな夏の夜

夕暮れの空に、ようやく暑さがやわらぎはじめたころ。

冷蔵庫を開けて、キンキンに冷えたビールを取り出すと、缶の外側にはうっすらと水滴が浮かび、まるで「お待たせ」と声をかけてくるような気がした。

グラスに注ぐと、シュワっと音を立てながら、黄金色の液体が泡立ち、ふわりとした泡が蓋をする。

その瞬間をただじっと眺めるのが、たまらなく好きだ。

慌てず、慎重に一口飲む。

冷たさが喉を滑り落ちる感覚が、一日の終わりを告げてくれる。

最近、ビールを飲むのは「何か特別な日」と決めていた。

それは、少しでも毎日を「記念日」に近づけたかったからかもしれない。

たとえば、頑張って掃除をした日。
家族を笑わせた日。
なんでもない、だけど「よくやった」と思える日。

今日もそんな日だった。

日中はうだるような暑さで、洗濯物を干すだけでも汗がにじんだ。

扇風機の風にあたりながら子どもを寝かしつけ、童謡を口ずさみながら背中をトントン。

小さな体がすうすうと寝息を立てるのを確認して、ようやく自分の時間になった。

冷たいビールの炭酸が、体に染みわたるたびに、
「今日も生きていたんだな」と実感する。

一人で飲む時間は、孤独とは少し違う。

むしろ、自分自身に還るための時間だ。

考えすぎていたこと、悩みすぎていたことも、泡と一緒に静かに消えていく。

そうして気づけば、ふと微笑んでいる。

今日という一日を「悪くなかった」と思えることが、どれほど大切か。

何も劇的なことは起きない日常。

だけど、そんな「普通の一日」にこそ、キンキンに冷えたビールが似合う。

それが飲めるということが、今日も無事だったということ。

それで十分。

また明日も、同じように暑くて、同じように忙しい一日になるかもしれない。

でも、その夜にまた、ビールを飲めると思えば少しだけ頑張れる。

そんな静かな、けれど豊かな夜だった。

川滿憲忠

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