フラダンスのリズムに心を委ねて
フラダンスの音楽が流れ出すと、不思議と心が落ち着く。
ウクレレの柔らかい音と、太鼓のリズムが体の奥に染みわたっていくような感覚。
初めてフラダンスを見たのは、まだ子どもだった頃。テレビの向こうの常夏の島、ハワイの陽気な雰囲気と踊る女性たちのやわらかい動きに、なぜだか心を惹かれた。
数十年経った今、地域のカルチャーセンターでふと思い立って参加したフラダンス教室。
鏡の前に立ち、先生の動きを真似るうちに、かすかに記憶に残っていたあの懐かしい情景がよみがえった。
フラは見た目こそゆったりとしているけれど、実際には全身を使ってバランスを取る繊細な踊りだ。
一歩ずつの動きに意味があり、手の振りには物語がある。
花、風、波、太陽……自然を表現する踊りは、まるで詩を舞で表すような感覚。
足の動きと手の動きを合わせるのは思った以上に難しい。
だけど、そこに意識を集中しているうちに、日々の小さな不安や悩みがふわっと軽くなるのを感じる。
まるで、フラダンスそのものが、心の浄化のように思えるのだ。
教室の仲間たちは年齢も背景もバラバラだけれど、踊っているときは一つのリズムでつながっている。
誰かと呼吸やテンポを合わせるという行為が、こんなにも心地よいとは、始めるまで知らなかった。
また、踊りの練習を重ねていく中で、自分の体との向き合い方も変わった。
無理に痩せようとせず、自分の身体の今を大切にすること。
動くことの喜びを素直に感じること。
フラは見た目の美しさより、内側から出る笑顔と穏やかさが大事なのだという先生の言葉に、私は何度も救われた。
忙しない日常の中、わずか週に一度のこの時間が、私にとっては大切な“自分に戻る場所”になっている。
ゆったりとしたリズムの中にある芯の強さを感じながら、今日もまた、裸足でフロアに立つ。
笑顔で踊ること。
それだけで、周囲の空気が少し和らぐ。
自分が少し好きになる。
そんな不思議な力を、フラダンスは持っているのだと思う。
川滿憲忠