ヨーロッパ一周バックパッカー14日目:アドリア海の風に包まれて──スプリットの港町で見つけた自由

 

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ブダペストを出発して、列車とバスを乗り継ぎながら辿り着いたのはクロアチアの港町・スプリット。 旅に出てから2週間、背中のバックパックが少し軽く感じるようになった。 それは、荷物が減ったというよりも、心が旅のリズムに馴染んできた証拠なのかもしれない。

アドリア海の陽光と古代ローマの息吹

スプリットの象徴といえば、やはり「ディオクレティアヌス宮殿」。 かつてローマ皇帝の別荘だったこの場所は、今では街そのものとして生きている。 石畳の上にはカフェのテーブルが並び、遺跡の壁にアートギャラリーが寄り添う。 歴史が“観光地”ではなく“生活”として続いていることに、強く心を打たれた。 路地裏では、ギターを弾く青年が旅人に微笑みかけてくれる。 彼の指先から生まれる音が石壁に反響して、まるで古代と今をつなぐ音楽のように響いていた。 「スプリットへようこそ」──その一言が、海風のように優しく胸に残る。

リヴァで過ごす穏やかな午後

港沿いの遊歩道「リヴァ」は、スプリットの心臓部だ。 白いヨットが並び、テラス席にはコーヒーを楽しむ人々の笑顔。 私はベンチに座り、潮の香りを感じながらアイスコーヒーを飲んだ。 冷たいグラスに浮かぶ水滴が、太陽の光を受けて輝いている。 ふと、「自由って、何だろう」と思った。 予定に縛られず、誰にも急かされない時間。 誰かと比べることもなく、ただ風と呼吸を感じていられるこの瞬間。 旅の中で初めて、“自由の意味”を実感できた気がした。

夕暮れの金色の街並み

夕方、海の向こうに太陽が沈み始めると、スプリットの街全体が金色に染まる。 石壁が光を反射し、街の輪郭が柔らかく溶けていく。 アコーディオンの音がどこからともなく流れ、道行く人々が自然とその方向へ足を向ける。 その瞬間、誰もが同じ空気を共有しているような、一体感があった。 隣に座った老人が、穏やかに語りかけてくれた。 「若い頃、私も旅をしたんだ。金はなかったけど、心は満たされていた。」 その瞳に映るのは、年月を越えても消えない“旅の記憶”。 私も、いつか同じように誰かに語りたくなる日が来るのだろうか──。 そう思うと、胸の奥が温かくなった。

夜のリヴァと、旅人の静かな夜

夜の港は再び賑わいを取り戻す。 カフェの灯りが波に揺れ、通りでは音楽と笑い声が響く。 私は少し離れたベンチでノートを開き、今日の出来事を書き留めた。 「旅をしていると、自分の中の“余白”に気づく。 新しい土地で出会う人、食べ物、風景──すべてが、自分という存在を少しずつ広げてくれる。」 この旅を始めた頃は、何かを“得よう”としていた。 でも今は、ただ“感じる”ことに満足している。 スプリットの夜風が、そんな心の変化をやさしく包み込んでくれた。 海面に映る月を眺めながら、静かに深呼吸をした。 波の音、遠くの笑い声、カモメの鳴き声。 そのすべてが、この街のリズムとして刻まれている。 明日は南のドブロブニクへ。 “アドリア海の真珠”と呼ばれるその街で、また新しい風を感じたい。
旅をしていると、 「世界は広い」だけでなく、「自分も広がっていく」と実感する。 それがきっと、旅の魔法。 今日もまた、その魔法の中で眠る。

川滿憲忠

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