ヨーロッパ一周バックパッカー15日目:ドブロブニクの海風と心の静けさ

 

ヨーロッパ一周バックパッカー15日目:ドブロブニクの海風と心の静けさ

クロアチア・スプリットを後にして、バスに揺られること約4時間。南へ向かう車窓からは、アドリア海の青がずっと寄り添っていた。目的地は、旅人の憧れともいわれる街──ドブロブニク。石造りの城壁に囲まれたこの街は、まるで映画のワンシーンのようだった。

到着してまず感じたのは、光の強さ。海に反射する太陽の輝きがまぶしくて目を細める。そして、潮の香りとともに胸の奥まで届く風。ここに立っているだけで、遠くまで旅してきたことを実感した。

城壁の上で感じた「旅の終わり」と「始まり」

旧市街を囲む城壁は、ドブロブニクの象徴。ゆっくり一周するのに1時間ほどかかるという。石の階段を上ると、目の前に広がったのはオレンジ色の屋根と果てしないアドリア海だった。

「これが、あの景色か」と息を呑んだ。風が頬を撫で、波の音がかすかに聞こえる。世界の果てに来たような錯覚に包まれながら、私はしばらくその場に立ち尽くした。

この15日間、いくつもの国境を越え、いくつもの感情を経験してきた。興奮、孤独、不安、そして再び喜び。それらすべてが今、静かに混ざり合って、心の奥で溶けていく。

石畳の路地と、カフェでのひととき

城壁を降りると、白く輝く石畳の路地が続く。観光客が行き交い、子どもたちの笑い声が響く。でも、少し奥へ入ると、時間が止まったような静けさが広がっていた。

古い教会の脇のカフェで、アイスカプチーノを注文。汗ばんだ手に冷たいグラスが心地よい。隣の席では、スウェーデンから来た老夫婦が「私たちも若いころ、バックパックで旅をしたのよ」と話しかけてくれた。

その言葉を聞いた瞬間、“旅は人生の一部になる”という意味が、少しわかった気がした。歳を重ねても、心は旅を続けられるのだ。

夕暮れのドブロブニク

午後になると、海辺の風が柔らかくなり、街全体がオレンジ色に包まれていく。再び城壁の上に上がり、沈む太陽を見送った。空と海の境界が曖昧になり、波の音が遠くで響く。

「今日も生きてここにいる」──そのシンプルな事実が、なぜか胸に染みた。旅の中で得る感情の多くは言葉にならない。けれど、確かに心の奥に刻まれていく。

夜風と星空の下で

夕食は海沿いのレストランで、シーフードパスタを。灯りが海面に反射して、幻想的な光景が広がる。近くの席からは英語やイタリア語が飛び交い、どこの国から来た人も、みんな笑っている。

食後、旧市街を歩いていると、小さな子どもが「ボクに手を振って」と笑った。その笑顔が、旅の疲れをふっと溶かした。見知らぬ国の、見知らぬ子どもに癒される。それが旅の魔法なのだと思う。

ホステルに戻り、日記を開く。「ドブロブニク。心が静まる街。来てよかった。」そう書いて、静かにペンを置いた。

旅を続けていると、いつの間にか“見る景色”よりも“感じる心”が主役になる。ドブロブニクで過ごした1日は、その象徴のようだった。

明日はバスでボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルへ向かう。内陸の街では、また違う旅の表情が待っているだろう。

今日のこの海の色を胸に刻みながら、眠りについた。

― 川滿憲忠

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