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10月 12, 2025の投稿を表示しています

ヨーロッパ一周バックパッカー15日目:ドブロブニクの海風と心の静けさ

  ヨーロッパ一周バックパッカー15日目:ドブロブニクの海風と心の静けさ クロアチア・スプリットを後にして、バスに揺られること約4時間。南へ向かう車窓からは、アドリア海の青がずっと寄り添っていた。目的地は、旅人の憧れともいわれる街──ドブロブニク。石造りの城壁に囲まれたこの街は、まるで映画のワンシーンのようだった。 到着してまず感じたのは、光の強さ。海に反射する太陽の輝きがまぶしくて目を細める。そして、潮の香りとともに胸の奥まで届く風。ここに立っているだけで、遠くまで旅してきたことを実感した。 城壁の上で感じた「旅の終わり」と「始まり」 旧市街を囲む城壁は、ドブロブニクの象徴。ゆっくり一周するのに1時間ほどかかるという。石の階段を上ると、目の前に広がったのはオレンジ色の屋根と果てしないアドリア海だった。 「これが、あの景色か」と息を呑んだ。風が頬を撫で、波の音がかすかに聞こえる。世界の果てに来たような錯覚に包まれながら、私はしばらくその場に立ち尽くした。 この15日間、いくつもの国境を越え、いくつもの感情を経験してきた。興奮、孤独、不安、そして再び喜び。それらすべてが今、静かに混ざり合って、心の奥で溶けていく。 石畳の路地と、カフェでのひととき 城壁を降りると、白く輝く石畳の路地が続く。観光客が行き交い、子どもたちの笑い声が響く。でも、少し奥へ入ると、時間が止まったような静けさが広がっていた。 古い教会の脇のカフェで、アイスカプチーノを注文。汗ばんだ手に冷たいグラスが心地よい。隣の席では、スウェーデンから来た老夫婦が「私たちも若いころ、バックパックで旅をしたのよ」と話しかけてくれた。 その言葉を聞いた瞬間、“旅は人生の一部になる”という意味が、少しわかった気がした。歳を重ねても、心は旅を続けられるのだ。 夕暮れのドブロブニク 午後になると、海辺の風が柔らかくなり、街全体がオレンジ色に包まれていく。再び城壁の上に上がり、沈む太陽を見送った。空と海の境界が曖昧になり、波の音が遠くで響く。 「今日も生きてここにいる」──そのシンプルな事実が、なぜか胸に染みた。旅の中で得る感情の多くは言葉にならない。けれど、確かに心の奥に刻まれていく。 夜風と星空の下で 夕食は海沿いのレストランで、シーフードパスタを。灯りが海面に反...

ヨーロッパ一周バックパッカー14日目:アドリア海の風に包まれて──スプリットの港町で見つけた自由

  本文 ブダペストを出発して、列車とバスを乗り継ぎながら辿り着いたのはクロアチアの港町・スプリット。 旅に出てから2週間、背中のバックパックが少し軽く感じるようになった。 それは、荷物が減ったというよりも、心が旅のリズムに馴染んできた証拠なのかもしれない。 アドリア海の陽光と古代ローマの息吹 スプリットの象徴といえば、やはり「ディオクレティアヌス宮殿」。 かつてローマ皇帝の別荘だったこの場所は、今では街そのものとして生きている。 石畳の上にはカフェのテーブルが並び、遺跡の壁にアートギャラリーが寄り添う。 歴史が“観光地”ではなく“生活”として続いていることに、強く心を打たれた。 路地裏では、ギターを弾く青年が旅人に微笑みかけてくれる。 彼の指先から生まれる音が石壁に反響して、まるで古代と今をつなぐ音楽のように響いていた。 「スプリットへようこそ」──その一言が、海風のように優しく胸に残る。 リヴァで過ごす穏やかな午後 港沿いの遊歩道「リヴァ」は、スプリットの心臓部だ。 白いヨットが並び、テラス席にはコーヒーを楽しむ人々の笑顔。 私はベンチに座り、潮の香りを感じながらアイスコーヒーを飲んだ。 冷たいグラスに浮かぶ水滴が、太陽の光を受けて輝いている。 ふと、「自由って、何だろう」と思った。 予定に縛られず、誰にも急かされない時間。 誰かと比べることもなく、ただ風と呼吸を感じていられるこの瞬間。 旅の中で初めて、“自由の意味”を実感できた気がした。 夕暮れの金色の街並み 夕方、海の向こうに太陽が沈み始めると、スプリットの街全体が金色に染まる。 石壁が光を反射し、街の輪郭が柔らかく溶けていく。 アコーディオンの音がどこからともなく流れ、道行く人々が自然とその方向へ足を向ける。 その瞬間、誰もが同じ空気を共有しているような、一体感があった。 隣に座った老人が、穏やかに語りかけてくれた。 「若い頃、私も旅をしたんだ。金はなかったけど、心は満たされていた。」 その瞳に映るのは、年月を越えても消えない“旅の記憶”。 私も、いつか同じように誰かに語りたくなる日が来るのだろうか──。 そう思うと、胸の奥が温かくなった。 夜のリヴァと、旅人の静かな夜 夜の港は...