サボテンが教えてくれた「ちょうどいい距離感」
ベランダの端に置いてある小さなサボテン。
数年前、ホームセンターで買った時には、特に深い意味もなく「緑があったらいいな」という程度だった。
それでも日々目にするたびに、少しずつ愛着がわいてきた。
構いすぎると良くない、でも無関心すぎてもダメ。
そんなちょっと不器用な植物との付き合いが、気づけば私にとっての癒しになっていた。
世の中はいつも速く、変化を求められる。
けれどサボテンは急がない。
少しずつ、じっくりと、自分のペースで成長している。
その姿が、最近の自分に重なって見える。
焦ってもいいことなんてない。
誰かと比べても、虚しくなるだけ。
そんなとき、サボテンの静かな姿が「そのままでいい」と教えてくれる。
植物は話さないけれど、ちゃんと伝えてくる。
言葉より深く、静かに心に届くメッセージ。
風が吹いた午後、ベランダでそのトゲの先に目をやりながら、私はまた少し気持ちが軽くなった。
川滿憲忠