ヨーロッパ一周26日目:再びパリへ。変わらない街と、変わった自分に出会う旅
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ヨーロッパ一周の旅もついに26日目を迎えた。
北欧の冷たい風、東欧の静寂、ドイツの力強さ──それらを越えて、僕は再びパリに戻ってきた。
同じ街を歩いているのに、まるで初めて来たかのような感覚。
それは街が変わったからではなく、きっと僕自身が変わったからだ。
パリ北駅を出ると、午前中の通勤ラッシュが少し落ち着いたころ。
テラス席でコーヒーを飲む人々、新聞を読む老人、足早に歩くスーツ姿の男性。
その全てが「いつものパリ」の姿だ。
でも今日は、その当たり前の風景が少し違って見えた。
まず向かったのは、ノートルダム大聖堂。
修復中の足場が残る姿は痛々しくもあり、同時に美しかった。
燃えたことも、再建していることも、すべてが“今”の姿としてここにある。
旅も同じだ。完璧でなくていい。途中の不完全さこそが、美しいのかもしれない。
セーヌ川沿いを歩きながら、過去の自分を思い出す。
初めてパリに来た時は、地図を片手にただ必死に歩き回っていた。
ルーヴルもエッフェル塔も、「見るべきもの」として急いで巡った。
でも今は、ただ歩くだけでいい。
その一歩一歩の中に、旅の意味がある。
午後はモンマルトルの丘へ。
相変わらず観光客で賑わっているが、サクレ・クール寺院の前に立つと静かな風が吹いた。
ギターを弾く青年の音が、空に溶けていく。
丘の上から見下ろすパリの屋根──その景色を前に、僕はただ座り込んだ。
何もせず、ただ眺めているだけでいい時間。
旅をしていると、こんな“止まる瞬間”がとても贅沢に思える。
夜は、セーヌ川沿いの小さなビストロへ。
「鴨のコンフィ」とグラスワイン。
一人で食事をしているのに、不思議と孤独ではなかった。
隣の席では老夫婦が微笑み合いながら、ゆっくりと食事を楽しんでいる。
その穏やかな時間を見ているだけで、自分の中の何かが静まっていく。
宿に戻る前、エッフェル塔がライトアップされる時間になった。
橋の上から見上げたその瞬間、5分間だけの輝きが夜空を照らした。
その光のきらめきは、まるで旅の象徴のようだった。
長い移動や小さな出会い、孤独な夜や心が震えた瞬間。
すべてが一瞬で過ぎていくけれど、確かに心に残っていく。
宿のベッドの上で、ノートに一行書き残した。
「変わらない街で、変わった自分に出会う」。
それが今日のテーマだった。
旅は、世界を見るためではなく、自分を見つめ直すためにある。
パリの街は、そのことを静かに教えてくれた。
明日は南仏へ向かう予定だ。
次にこの街を訪れるとき、僕はどんな自分になっているだろうか。
パリの夜は、そんな未来の自分への希望をやさしく灯してくれた。
川滿憲忠