>ヨーロッパ一周バックパッカー17日目:サラエボで感じた「過去と共に生きる」力
ヨーロッパ一周バックパッカー17日目:サラエボで感じた「過去と共に生きる」力
ドブロブニクを出て、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボへ。
この街の名前には、いつも重みがある。バスの車窓から見える景色は穏やかで美しいのに、心の中にはどこかざらついた感情が残る。
戦争という過去と、どう向き合ってきたのか。それを自分の目で確かめたい――そんな思いで、私はこの街に降り立った。
壁に残る弾痕と、人々の笑顔
サラエボの街を歩くと、今も多くの建物に弾痕が残っている。
けれど、その傷跡のすぐ隣で、パン屋の香ばしい匂いが漂い、カフェでは人々が笑いながらコーヒーを飲んでいる。
その対比に、胸を締めつけられるような感情が生まれた。
過去を隠さずに、日常を取り戻していく――それがこの街の生き方なのだろう。
「サラエボのバラ」に込められた記憶
旧市街を歩いていると、道路のあちこちに赤い跡があった。
それは「サラエボのバラ」と呼ばれるもの。爆撃でできた穴を赤い樹脂で埋め、犠牲者を追悼する記念として残している。
消してしまうこともできたはずなのに、あえて残す。
その選択に、この街の強さと優しさを感じた。
「忘れない」ことが、サラエボの人々にとっての希望なのだと思う。
平和を語る若者との出会い
夕方、バシチャルシヤのカフェで、ひとりの大学生と話をした。
彼は平和学を学んでいる青年で、こう語った。
「戦争を忘れることは簡単。でも、向き合って乗り越えることは難しい。だから僕たちは、それを続けるんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。
旅先で出会う何気ない会話が、心の奥深くに響くことがある。
サラエボ要塞からの夜景
夜、Yellow Fortress(サラエボ要塞)に登ると、眼下には無数の光が広がっていた。
過去に火の粉が舞い上がった街が、今は灯りで満ちている。
その光景はまるで、人々の希望そのものだった。
静かに息を呑みながら、「人は何度でも立ち上がれるんだ」と実感した。
“旅”がくれるもの
このサラエボで感じたのは、「他人の痛みに想像を向ける」ということの大切さ。
自分が平和な国で暮らしていることを、当たり前だと思ってはいけない。
旅は、世界の多様な痛みと美しさを、自分の感情で受け取ること。
その体験こそが、何よりの学びなのだと改めて感じた。
最後の一杯と、ノートの一文
夜のカフェで、ボスニアンコーヒーを飲みながらノートを開いた。
“傷跡を消さず、美しく残す。それがサラエボの誇りだ。”
そう書き残したとき、涙がこぼれた。
明日はセルビア・ベオグラードへ。
また新しい土地で、新しい出会いが待っている。
そして、サラエボで感じた「静かな強さ」を胸に、私は次の一歩を踏み出す。
― 川滿憲忠