ヨーロッパ一周22日目:ベルリンで感じた「自由」と「再生」の街

プラハの朝靄を抜けて、列車が北へと走る。ヨーロッパ一周22日目の目的地は、ドイツの首都・ベルリン。冷たい空気が窓の外から流れ込み、都市の輪郭が見え始めた瞬間、僕はこの街が特別な場所だとすぐに感じた。  

それは、歴史の重さと再生のエネルギーが、同じ空間の中で生きているからだ。


駅に降り立つと、ベルリンの街は広く、どこか無機質なようで、しかし人々の表情には確かな温度があった。かつて「壁」で分断された都市は、今では多様な文化と人種が入り混じる自由都市へと変貌している。その空気の中を歩いていると、足音の一つひとつが過去と現在を行き来しているような感覚になる。


最初に向かったのは「ベルリンの壁跡」。  

東西冷戦の象徴だったその壁はいま、世界中のアーティストたちによって描かれた壁画のギャラリーになっている。色彩豊かな絵の中に、人々の祈り、怒り、希望が入り混じっていて、ただの観光地とはまったく違う“生命の記録”を感じた。  

とくに「キスの壁画」。ソ連のブレジネフと東独のホーネッカーが熱く抱擁するあの作品の前で、立ち尽くす人が多い。僕もその一人だった。笑顔で写真を撮る観光客の背後で、僕の心には何か説明できない痛みが生まれていた。  

この街には、いまも確かに“分断”の記憶が息づいている。


午後にはブランデンブルク門へ向かった。  

壁によって閉ざされていたかつての国境線。だが、いまその前では、観光客も地元の子どもたちも自由に歩き回っている。ギターの音が響き、空にはシャボン玉が舞っていた。その光景を見て、僕は思った。  

「自由とは、与えられるものではなく、自分で選び続けることなんだ」と。  

この街の人々がそのことを知っているからこそ、ベルリンは強く、美しいのだろう。


夜になると、アレクサンダー広場に屋台の光がともった。ビールの泡、ソーセージの香り、そして街角で踊る若者たち。まるで「生きている」ことを全員で祝っているようだった。過去の悲しみを抱えた街が、いまこれほどまでに楽しげに呼吸していることに胸を打たれた。  

ベルリンは、“壊れた過去の上に立つ幸福”を体現していた。


宿に戻ってノートを開く。  

「過去を忘れず、でも過去に縛られない街」  

そう書いてみて、ようやく今日という一日が自分の中で整理された気がした。旅とは、ただ景色を巡ることではなく、自分の中の“時間”を巡る行為なのかもしれない。  

人にはそれぞれの「壁」がある。  

でも、その壁に絵を描けるようになったとき、人はもう一度自由を取り戻す。


窓の外には静かな夜景が広がっていた。  

ベルリンの街が放つ光は、決してまぶしくないけれど、確かに前へ進もうとする人の灯りだ。  

22日目の夜、僕は次の目的地──アムステルダムへの切符を手に、静かに目を閉じた。  

旅は、まだ終わらない。


川滿憲忠

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