ヨーロッパ一周24日目:静けさの中にある誇り──ブリュッセルで見つけた“本当の豊かさ”
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ヨーロッパ一周24日目。
アムステルダムから鉄道で約3時間。
たどり着いたのは、ベルギーの首都・ブリュッセル。
大都市でありながら、どこか控えめで穏やかな雰囲気をまとっている。
街を包む空気の中に、“静けさの誇り”のようなものを感じた。
まず訪れたのは、世界遺産にも登録されている「グラン=プラス」。
石畳の広場には金色の装飾をまとったギルドハウスが立ち並び、
それぞれの建物がまるで時代を語るように佇んでいる。
広場の真ん中に立つと、過去と現在が交錯するような不思議な感覚に包まれた。
人々が暮らしの中で守り続けてきた“文化の重み”が、静かに伝わってくる。
昼は地元のブーランジュリーでワッフルを食べた。
粉砂糖だけをかけた素朴な味。
観光地らしい派手な演出は一切ない。
だがその一口が、なぜか心に残った。
店を切り盛りする老夫婦の、誇りと優しさが滲んでいたからだ。
旅の中で、こうした「何気ない瞬間」こそが心を動かす。
午後は“世界一有名な像”ともいわれる「小便小僧」を訪ねた。
実際に見ると驚くほど小さい。
けれど、その小ささがかえってこの国らしい。
見栄を張らず、ありのままを受け入れる。
そんなユーモアが、ブリュッセルという街の懐の深さを象徴している気がした。
続いて王立美術館へ。
マグリットの作品群に出会う。
「これはパイプではない」と書かれた絵を前に、
“見る”ことの意味を問いかけられているようだった。
ベルギーという国は、一見地味で控えめだが、
その奥には知性と哲学が静かに息づいている。
派手な観光名所よりも、こうした深い思考の文化にこそ惹かれる。
夕方、カフェでベルギービールを飲みながら、
窓の外を行き交う人々を眺めた。
皆がどこか穏やかで、焦りのない表情をしている。
「暮らしを楽しむ」という価値観が、この街には自然にある。
経済の強さでも、観光の派手さでもなく、
“生き方そのものの豊かさ”を感じさせてくれる街。
夜、ホステルで出会ったフランス人の旅人が言った。
「ベルギーは地味だ。でも、その静けさがいい。」
その一言に、僕も深くうなずいた。
主張しすぎず、でも芯がある。
それは旅人として生きる上でも、ひとつの指針のように思えた。
今日という一日で学んだのは、
“目立たないことの中にこそ本質がある”ということ。
派手な体験ばかりが旅ではない。
誰かの日常の中に、旅の答えが隠れている。
ブリュッセルの夜風に吹かれながら、
僕は静かにそのことを噛みしめた。
――川滿憲忠