ヨーロッパ一周25日目:静寂の街ブルージュで感じた「旅の本質」とは
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ヨーロッパ一周も25日目。
列車に揺られながらベルギーの北西部、ブルージュへと向かった。
ブリュッセルの喧騒から離れ、車窓に映る風景がのどかになるにつれ、心が不思議と静まっていく。
駅を降りた瞬間、空気がやわらかく、湿った風が運河の香りを運んできた。
ブルージュは「屋根のない美術館」と呼ばれる街だ。
中世の街並みがそのまま残り、石畳の道を歩くと、時代の境目が消えていく。
観光地でありながら、どこかに“静けさ”がある。
この街は、訪れる人を急がせない。
まず向かったのはマルクト広場。
カラフルなギルドハウスが並び、その中心にはベルフォートの鐘楼がそびえる。
366段の階段を登って見下ろした街は、絵画のようだった。
赤茶の屋根、運河の反射、遠くに広がる草原。
人間の手が作り上げた街の美しさと、自然の穏やかさが溶け合っていた。
ランチには「ムール貝の白ワイン蒸し」を選んだ。
ベルギービールと一緒に味わうその時間は、まさに旅のご褒美。
時計を見ることもなく、ただゆっくりとした昼下がりを楽しむ。
旅に出て感じる“何もしない贅沢”が、ここにあった。
午後は、ブルージュ名物のチョコレート店を巡る。
石畳の通りにはショコラトリーが軒を連ね、店ごとに個性が光る。
老舗のショコラトリーで試食したトリュフは、まさに芸術品。
香りが立ち上がり、口に入れた瞬間にすっと溶けていく。
「甘い」ではなく「香る」。
その奥ゆかしさに、ベルギーらしさを感じた。
夕方、運河沿いの遊歩道を歩いた。
西日に照らされた水面が金色に輝き、街が一瞬、静止したようだった。
観光客も地元の人も、みんなその光景をただ眺めていた。
言葉もカメラもいらない瞬間。
その空気の中で、“旅をする意味”が少し見えた気がした。
夜は宿の近くの古本屋でノートを買った。
表紙には手描きのブルージュの街並み。
ページをめくるたび、今日の風景を思い出せるような気がした。
旅を始めて25日。
新しい街、新しい出会い、そして自分自身。
旅は“非日常”の中で、むしろ自分の日常を見つめ直す時間なのかもしれない。
SNSでは派手な旅や刺激的な場所が注目される。
けれど、本当の旅は“静かな時間”の中にある。
ブルージュはそれを教えてくれた。
旅の本質は、スピードでも映えでもなく、“自分の心が動く瞬間”を見つけること。
明日は再び列車でフランスへ。
けれど、今日見たブルージュの光と静けさは、旅の終わりまで忘れられないだろう。
川滿憲忠